桜の季節が終わり、欅の葉が少しずつ芽吹いてきました。
染井吉野の木に紛れて少し目立ちませんが、参道では八重桜の花が咲いています。
また昨年植えた山吹も無事に根づき、今年も可愛らしい花を咲かせています。
「七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき」
山吹といえば、太田道灌にちなんだこの和歌を連想される方も多いのではないでしょうか。
実はこの和歌は太田道灌が読んだのではなく、平安の頃の歌人兼明親王が詠んだものです。
鷹狩の帰り雨に降られてしまった道灌は、蓑を借りたいと一軒の家を訪ねました。
ところが、その家の娘は黙って山吹の花を差し出したそうです。
八重咲きの山吹は実をつけないことから、実がない、お貸しできる蓑がない。
直接言葉にするより、兼明親王の和歌を踏まえ山吹の花に託した娘の心に感じ入り、以後道灌は歌の道に親しむようになったのだそうです。